何も成し遂げられないと思っている人へ。やり抜く力を伸ばす本【 GRIT(グリット)】を読みました。
私は何かを作業する時には瞬発型だと自分で自覚してるのですが、それと裏表で何かをひたむきに長期間やり続ける事が得意ではありません。
美術系以外で習い事が続いたのは、水泳7年と音楽が6年ほどでししょうか。 色々な理由があると思うのですが、何かを辞めてしまったの時に、「ああ、なんで自分はなにもやり抜くことが出来ないんだろう」と思っていました。
そんな時、この本が発売されました。読めば読むほど面白く アマゾンでも話題(と言っても2016年に出版された)本なのですが、定期的に読み返してはエネルギーをもらっています。
この本は何?
科学的、心理学的な目線で「やりぬく力とはどういったものなのか?」「才能とはなんなのか?」「天才とは何で構成されているのか?」を紐解いた内容になっています。
以下に当てはまる人に是非読んでほしいと思います。
- 自己評価が低い人、同時に、自分への理想が高すぎる人
- 周りから「何でそんな事も出来ないの」と言われ続けている人
- 子供がいる人、子どもの敎育で悩んでいる人
- チームビルディングやコーチングに悩んでいる人
私は教育サービスの人間でしたが、それに関してもこの本は「学習」というポイントに関して、非常に重要な内容を語っています。
今回は、この本の中で気になったいくつかの話をご紹介します。
才能とはどうやって芽生えるのか?
他人の能力を見抜く人材
これは、私がこの本の中で一番好きな話です。
ペンシルバニア大学の心理学者、スコット・バリー・カウフマン氏は、カーネギーメロン大学、ケンブリッジ大学、イェール大学で学位を取得しました。
ところが、スコットは子供の頃、学習遅滞児だと思われていました。これには耳の病気という原因がありましたが、実際学校の成績は悲惨でした。
- やがて特別支援学級に入れられました
- 小学3年で留年し、さらに1年遅れをとりました。
- 心理学者に知能テストは悲惨な結果でした。(そのテストのことは、今思い出すだけでもつらいそうです。)
- 学習障害のある児童のための特別支援学校に転校することになりました。
そして、ここでスコットの人生でとても大事な事が起こります。
14歳のとき、生徒たちのことを注意深く見守っていた支援学級の教師が、スコットをわきに呼んでたずねました。先生は
「君はもっとよくできるはずなのに、どうしてこのクラスにいるの?」
と聞いたのでした。
「え、どういうこと?」それまで、スコットはずっと、自分が知能が低いと思い込んでいました。
しかし、自分の可能性を見出してくれた一人の教師との出会いが、決定的なターニングポイントとなりました。それまで、「この程度しかできない」と決めつけられてきたが、なんだってやってみなければわからないという考え方になったそうです。
その瞬間から、スコットは沢山の事に挑戦しました。どれも器用にこなしたとは言えませんでしたが、ここから学んだことは「ぼくだって、捨てたもんじゃない」ということでした。
貴重な他人の才能を見抜く力がある人
実は、「他人の才能を見抜く力がある人」は世の中にそんなにいません。経験を積んだ人間かどうか、という事とは別です。 もしもみなさんが、他人を観察し、方向性を見抜く人を見つけたならば、絶対に手放してはならない友人です。
一流の人材とは、数千時間の積み重ねによって生まれる
本書の中では、何人か「一流」とよばれる人材について語られていますが、具体的にはどうやって生まれるのでしょうか?生まれたときから才能があるのでしょうか?スポーツなどの基礎的な筋肉構造の話は別として、作者は一流が生まれる理由を以下のように記載しました。
もっとも重要なのは、数千時間もの厳しい練習を何年間も積み重ねてきたことだ。そうやって個々のスキルを徹底的に磨き上げてきたことが、完全なパフォーマンスとなって実を結んだのだ
つまり「努力」が大きな幅をとっており、かける才能と結びついたものを「スキル」と呼ぶそうです。 では、具体的にそれぞれがどう結びつくのか?を以下に記載します
才能、努力、スキル、達成はどう結びつくのか
努力は2重に影響する
- 才能とは、努力によってスキルが上達する速さのこと
- 達成とは習得したスキルを活用することによって現れる成果のこと
※もちろん、優れたコーチや教師などの「機会」に恵まれることも重要ですが、この本ではこのような「幸運」は考慮されません。
- スキルは努力によって 培われる
- スキルは努力にとって生産的になる
本の中で、ジョン・アーヴィングという作家が登場します。「現代アメリカ文学における偉大なストーリーテラー」と称されている人物です。
「殆どの作品は、最初から最後まで書き直した。自分の才能のなさを身にしみて感じた。」
アーヴィングは重度の読字障害で、いまでも、文字を指でたどりながら読むそうです。 アーヴィングが、身をもって学んだことは以下になります。
何かを本当にうまくなりたいとおもったら、自分の能力以上に背伸びする必要がある。 僕の場合は、人の倍の注意力が必要だった。ただ、そのうちわかってきたんだ。 同じことを何度も繰り返すうちに、以前はできそうになかったことが、当たり前のようにできるようになる。だがそれは、一朝一夕にはいかない。
2倍の才能があっても1/2の努力では負ける
さて、上記ですこしお話しましたが、才能とスキルは別物です。 スキルは掛け算で算出されるので、例え才能が人の2倍あっても、努力が足りなければ人に負けます。
- 努力をしなければ、たとえ才能があっても宝の持ち腐れ
- 努力をしなければ、もっと上達するはずのスキルもそこで頭打ち
- 努力によって、初めて才能はスキルになり、努力によってスキルが活かされ、様々なものを生み出すことが出来る
才能は生まれつきのものですが、スキルはひたすら何百時間、何千時間もかけて身につけるしかありません。
人生で成功する秘訣の80%は、めげずに顔をだすこと
人生というマラソンで、長く走り続けるにはどうしたらよいのでしょうか? 作者は以下のように語っています。
私たちは、新しいことを始めても長続きしないことが多い。しかし「やりぬく力」のある人にとっては、一日にどれだけ努力するかより、来る日も来る日も、目覚めた途端に「今日も頑張ろう」と気合をいれ、ランニングマシンに乗り続けることが重要なのだ。
今日必死にやるより、明日、またトライする人のほうが、やりぬく力が強いといえます。
やり抜く力について
では、この本書のメインテーマである「やりぬく力」についての話です。 「ものすごくがんばる」のは、やりぬく力といえるのでしょうか? 答えはNoです。
やり抜く力の正体は【持久力】
まず、「やり抜く力」は瞬発力ではなく、持久力のことです。 それは、「情熱」と「粘り強さ」で構成されます。 また、本書内では「情熱」と「粘り強さ」がわかるテストがあるので、購入して是非テストして欲しいと思います。
情熱とは、一つのことに専念すること
情熱は「熱心に取り組んでいること」ではありません。 実際、偉業を成し遂げた人たちに、「成功するために必要なことは?」とたずねると、「夢中でやること」や「熱中すること」と答える人は殆ど居ません。必要なのは「熱心さ」ではなく「ひとつのことにじっくりと長い間取り組む姿勢」と答えることが多いようです。
「哲学」を持たなければ失敗する
ここで言う、哲学とはどのようなことでしょうか? 「あなたが本当にやりたいことは何ですか?」と突然質問されたら何と答えますか?
これは「人生でなにをしたいのか?」(あなたの【情熱】はなにか?)という質問の意図です。
一般的に、人生でなにをしたいのかがわかるまでは、かなりの時間がかかります。
この本の中で、アメリカン・フットボールのコーチ、ピートは、コーチとしてのキャリアがどん底の時に、親しい友人が真剣にピートにあることを説きました。それは
「人生を貫くような哲学を持たなければだめだ」
ということでした。この意味を理解するまで、彼は何週間も何ヶ月もかかりました
【哲学】と【究極的関心】
なぜ哲学を持つ必要があるのでしょうか? この本の中では、【究極的関心】が目標に方向を与えると書かれています。 以下が図の例になります。
- 一番下は最も具体的な個別の目標。日々のTodoリストにかくようなもの。
- 上位になるほど全体的、抽象的で重要な目標になる。
例:「なぜ定時に出勤するのか?」時間を厳守するため。 「なぜ時間を厳守するのか?」一緒に働く人たちに敬意を示すため。 「なぜそれが重要なのか?」よいリーダーになるため。
このように自分に対して「なぜ」を問いかけると、何がおきるのでしょうか?
つねに「〜するため」という答えが見つかる。やがてピラミッドの頂点、すなわち最上位の目標にたどり着くだろう。最上位の目標は、ほかの目的の「手段」ではなく、それじたいが最終的な「目的」なのだ。
つまり、「哲学を持つ」とは、「全てを束ねる最上位の目標」であり、大きな人生という道を歩くためのコンパスに当たります。
やり抜く力が【ない】とはどのような状態か?
逆に、やりぬく力が無いとはどのような状態でしょうか?
「やり抜く力」が非常に強い人の場合、中位と下位の目標のほとんどは、何らかの形で最上位の目標と関連している。 それとは逆に、* 各目標がバラバラで関連性が低い場合 * は、「やり抜く力」が弱いと言える。
では、実際に「やり抜く力」の欠如はどのような形で現れるのでしょうか?
目標の乱立
何故目標が達成できなくなるのか?それは以下のケースが多いそうです。
- 注意の目標が乱立する
- それを一つに束ねる、最上位の目標が存在しない
- 複数の目標のピラミッドが対立しあっている
もちろん、一つに束ねる目標を持つことは難しく、目標も対立も人間にとってある程度は避けられません。
参考として、この著者の場合は「職業人」と「母親」としての目標のピラミッドがあると言っています。 最初はキャリアを諦めるか、子供を持つのをあきらめるかで悩むこともあったようですが、やがて、「自分にとって一番良い選択をするしかない」という結論になったそうです。
このように、最初は目標が乱立していても、後から大きな最上位の目標が出現することもあります。
やること、やらないことも決断する
重要度の低い目標をあきらめるのは悪いことではなく、むしろ必要な場合もある。と本書では書かれています。
ほかにもっとよい実行可能な目標があるなら、ひとつの目標だけにいつまでも固執するべきではない。また、同じ目標を目指すにしても、いまの方法よりもっと効率的な方法や、もっと面白い方法があるなら、新しい方法に切り替えるのは理にかなっている。
この後、本書内では大富豪ウォーレン・バフェットがあるパイロットに伝授した目標達成方法が書いてあるので、ぜひみてみて下さい:)
やりぬく力を伸ばすには?
此処から先は、書籍内の核心に触れることになりますので、ぜひ書籍で読んでみて下さい:) 私が興味を持ったいくつかの章をご紹介いたします。
- 最初に厳しくしすぎると、「取り返し」がつかなくなる
- 興味を観察する親が、子供の情熱を伸ばす
- 取り組むべきことを発見するかんたんな質問
実践について
- 意図的な練習は一日に3〜5時間が限界
- 意図的な練習をしなければ上達しない
- フローに入れば努力はいらない
- フローとやり抜く力は密接に関連している
目的と希望を見出す
- ー快楽を追うことと、目的を追求すること
- だれかの役にたっていること
- もう一度立ち上がれる考え方
- 「楽観主義者」と「悲観主義者」
- 子供の頃の褒められ方が一生を左右する
- 成績のいい子を特別扱いすると「固定思考」になる
筆者が子どもを育てていることもあり、実際の生活に例えた表現がたくさん出てきます。なので、直ぐに私生活に応用可能です。
子どもの敎育に悩んでいる方にも、是非読んでほしいです。
また、家族や子どもの話だけではなく、上記で出てきたチームビルディングや、コーチングの話なども出てきます。なので、後輩育成を行うマネジメントや先輩の方にもおすすめです。
実際に人間の感情や行動の変化の例も、統計情報や心理学など、学術的側面から読み解いた内容となっています。
ページ数が多い本ではありますが、章立てになっているので私は逆引き辞典の用に使っています。定期的に読み返すと、毎回発見があります。
とてもおすすめの本なので、是非読んでみて下さい:)