meycoのUX&UIデザイン技術メモ

@meycoがUIデザイナー&アーティストとして仕事する上で、役にたった事をひたすらまとめます。ゲームUI強めです。My portfolio site.: http://meycou.com/ noteで小説や漫画を書いています:https://note.mu/meyco

クリエイターは必ず読もう。【ピクサー流 創造するちから】を読んだら凄かった。

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photo by Lucius Kwok

アニメーションスタジオとして、有名なピクサートイ・ストーリーという世界ではじめての長編3D映画を作ったスタジオです。私はピクサーの映画ではWall・Eが一番好きです。無声のアニメーションで、あんなに面白い3Dアニメーションを作れるのは、全世界でもここしかないと思います。

そんなピクサーの社長が書いた【ピクサー流 創造するちから】という本を読みました。

ピクサー流 創造するちから

ピクサー流 創造するちから

 

 

内容は、自伝的マネジメント本とでも言ったほうがよいかもしれません。 ここ最近で読んだ本では、トップ3に入るとてもおもしろい本でした。 内容は大きく分けて

  • なぜ3Dの映画を作ろうと思ったのか
  • 会社をどのように大きくしてきたのか
  • ピンチをどのように乗り越えてきたのか
  • 素晴らしいアイディアをつくる工程とは
  • 大きくするにあたって、どのような社内マネジメントを行ってきたのか
  • ディズニーと一緒に仕事をするということは?
  • スティーブ・ジョブズ氏とどの様に付き合っていたのか

を中心に書かれています。社内マネジメントの話が半分以上ですが、マネジメントに興味がなくても、クリエイターは 絶対に読んだほうがいいです。断言します。

 

また、人数が多い大企業、もしくは小さなスタートアップ関係なく、この本は自信を持ってオススメしたいです。 なぜなら、この本は「世界に影響を与えるモノを、チームでどの様につくり上げるか?」が書かれています。 基本的に、「世界に影響を与えるモノ」を作るときは、チームである必要があります。社内、もしくはチームコミュニケーションが いかに上手く取れているかで、その作品、もしくはプロダクトと呼ばれるものの運命を左右します。 その【コツ】のようなものが書かれているので、チーム制作で何かを作っている人は、是非読んで欲しいなと思いました。

内容が多く、そしてかなり濃いので全部は紹介しきれないのですが、印象に残っていることをざっくりと紹介したいと思います。

 

世界に影響を与えるモノを作るために、とても大事なこと

マネジメント系

ピクサーを特別にしているものは、「問題はかならず起こる」と思って仕事をしているから

基本的に、問題は仕事をしている上で必ず起こる。ですが、それを明るみに出さない、見なかったことにする事は多いと思います。 しかし、ピクサーは最初から「問題は起こる」事を認識して仕事をしており、それが自分たちがどれほど不快に思っていても明るみに出し、努力して解決しようとします。 また、問題にぶち当たっときは、全社勢力を上げて解決をするそうです。

トイ・ストーリーによって技術よりも「いいモノ」を作るという目的が認められる

トイ・ストーリーは世界最初の長編3Dアニメーションとして有名ですが、この作品を成功させた要因はなにか? それは、「いい物語をつくる」という飽くなき執念と、実際に出来た素晴らしいストーリー、キャラクターの表情でした。 もちろん、革新的技術でこの物語は作られましたが、技術よりも、「中身」で評価されたという本来の目的が認められたのでした。 近年、私達の社会は新しい技術、特に今はVRウェアラブルバイスが出てきていますが、革新的技術を押したモノより、 「私達の生活に、どのような選択肢、あるいは夢や物語が生まれるのか?」を考えて製品づくりをしていきたいなと思いました。

実際の制作工程にて

ここでは、デザイン作業の中で、陥りやすい現象をピックアップしています。

中身がきちんとしていれば、視覚的に洗練されてるかどうかは、問題にならない

基本的に、アニメーション制作は大体キツキツなスケジュールになります。〆切が近づくにつれ、より優れた画像を作ろうとし、背景や細やかなアニメーションをもっと洗練させようとしていました。 ピクサーも同じような現象が起こったことがあり、プレミア上映用のアニメーションは、作り上げたフルカラーアニメーションの中に、ところどころ白黒のワイヤーフレーム映像が混じったり、キャラクターがモックアップ状態のまま、プレミア上映することになりました。 製作者たちは冷や汗モノです。

所が、それを見たお客さんは、物語に感情移入しすぎて、そうした欠陥に気付かなかったのでした。 私達デザイナーが、どれだけ美術的に最高のものを作ろうとしても、物語(内容)の方が圧倒的に大事です。それがきちんとしていれば、視覚的に洗練されてるかどうかは関係ありません。

実は、デザイナーは結構この現象に陥りやすいです。 新製品開発などをやっていると、意外とこの部分に気づかず、一瞬、しかもほぼ1度しか映らないのに丸1日かけたりなど起こります。 これは気をつけようと思いました。

グッド・ノート(良い指摘)の仕方

率直なフィードバックがいかに重要で貴重あり、それがなかったら良いものは作れない。 作った方からすると、つらい気持ちになったりしますが、良い指摘は「具体的」である事が重要です。 良い指摘とは下記の提案を指します。

  • 悪いところ
  • 抜けている点
  • わかりにくい点
  • 意味をなさない所
  • 【要求】はしない
  • 修正案も無くていい。(あっても「可能性」という意味で提案)
  • 問題を直せる時点でタイムリーに直す

基本的に「意見は具体的に」する必要がある。

最悪な指摘の仕方は「これは何か気に入らないから直して」「身悶えするほど退屈」など、個人的感想をまったく具体的じゃない言葉で述べること。これ本当に困るので皆さん絶対にやめましょう。

基本的に、指摘は本人にとっては辛いし聞きたくない事です。 そういう時は、問題点をいい換えながら50回ぐらい指摘しましょう。その内のどれかが響いて相手の目がぱっと開くそうです。

実際にどんな指摘の仕方をしたらよいか?という例ですが、本文の中では 『このシーンの脚本がイマイチ』と、言う代わりに『見終わった観客に、あのセリフ良かったよね。って言ってもらいたくない?』と、子供に宿題をやり直したくなる事をイメージして言うといいと思います。

結局は、人のやる気が大事なのだと思いました。

クルーが混乱しているときは、そのリーダーも混乱している

ピクサーの社員は基本的に、問題は起こるものだと思っており、批判的になることもありますが、直ぐに批判に走ったりはしません。とりあえず、もっと頑張ろうとします。 「このシーンがしっくりこないけど、まだどう修正するか決めていない。今考えてるから、作業をそのまますすめて下さい!」といえば、クルーはどこまででもついて行くそうです。

ですが、この時に問題が悪化しているのに気づかないふりをしたり、指示を待ってる状態を見ると、クルーは不安になります。 そうなった時は、すぐにマネジメントが出てきます。その時に行われる【ブレイントラスト会議】と呼ばれる物があります。

ブレイントラスト会議とは

製作中の作品に対し、映画監督や脚本家など十数名が中心となり、建設的な意見をチームにたいしてフィードバックするミーティングです。
メンバーはジョン・ラセターを始めとする、著名なメンバーがいます。ですが、このミーティングでは、立場を気にせず、率直で正直な意見をすることが求められています。
 また、その会議で出た意見にかならず従う必要は無いですが、問題として上がった以上は何らかの対処をしなければならないという【認識】が最も重要になってきます。 会議では、意見の対立はならなくてはならないもので、そこで試されて生き残るのが最高のアイディアです。

最初からいいものを作る必要が無いと思っています。

人は、わかったつもりで後々わかっていなかった事に気づいたら、オープンに目標を変えるべきとの事。目標は緩く、意思は固く持ったほうが良い。 独創的で質のいい作品を作る意思が揺らぐことがないよう、目標を調節することはやぶさかではないが、最初からいいものを作る必要が無いと本書では言っています。 それが新しいものを守る企業文化を確立する唯一の方法でもあるからです。

【1セントのコイン】現象

完璧な陰影をつけた1セント硬貨という現象は、作品にとりくむアーティスト達が、あらゆるディティールに拘り、何週間もかけるが、作っているのは「誰にも気づかれないサイドテーブルの1セントコイン」という意味。 具体例は、

  • モンスターズ・インクで高く積み上げられたCDジャケッの一つ一つにジャケットデザインを施したのに、一瞬しか映らなかった。
  • 水槽内の魚や水のモデリングでかなりの時間を裂いたのに、ボツになった。

などです。 上記でも似たようなことを書きましたが、

「私達デザイナーが、どれだけ美術的に最高のものを作ろうとしても、物語(内容)の方が圧倒的に大事です。それがきちんとしていれば、視覚的に洗練されてるかどうかは関係ありません。」

というのが真実です。 このような状態に陥るのは、基本的にはマネージャーやディレクターが、デザイナーに製作の優先順位を正確に伝えていないのが原因です。 優先順位をもう一度確認し「なにをすべきなのか」をしっかり割り出すことが大切だと思いました。

いいアイディアとスタッフ、どちらが大切?

アイディアをきちんと形にするには、「いいチーム」が必要

この本のなかで、何回も繰り返し話しているとても重要な事があります。それは

「いいアイディアを二流のチームに与えたら台無しにされる。二流のアイディアを優秀なチームに与えたらそれを修正するか、捨ててもっといいものを思いついてくれる。」

という内容です。つまり、いいアイディアよりも、【適切な人材】と【化学反応】を得ることの方が重要という事でした。 「人材は優秀だけど、いいアイディアが出ない・・・」と嘆いている人は、この2つのどちらかが欠けているという訳です。

アイディアは、人が考えるものだ。だから、人のほうが大事だ。

上記の話に通じますが、よく考えれば歴然としています。また、多くの人が勘違いしていることですが【アイディア】は独立していません。何万もの決定を通して、沢山の人の頭の中を掛けあわせて、少しずつ形になり発展するものです。 そして、あらゆる想像的試みの決め手は、人であり、良いアイディアの決め手はその人仕事のやり方、才能、価値観にこだわるかどうかです。と本書では書いています。

 

 

確かにこの本は長いのですが、ものすごく面白いです。

色々考えさせられる事は多かったですが、印象的なのは「人に感謝をきちっと伝える」など、そういった人間関係の改善で、圧倒的にいい物が作りやすくなる。 という内容でした。

今までは、スターエンジニア、もしくはデザイナーがいて、それに従って作るのが正解だと思ってたんですが、 今はスターがいるだけではダメで、他のチームメンバーとの化学反応が必要という内容に目からうろこでした。

 

他にも、ピクサー時代のスティーブ・ジョブズの話や、ルーカス・フィルムの時の話なども凄く楽しかったです。 本当に近年稀に見る、クリエイター向けのオススメ本なので、是非読んでみて下さい。

 

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法

 
ピクサー流 創造するちから

ピクサー流 創造するちから